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インドネシアで150人のスマホスクリーン覗いてみた

2019年某日、インドネシアの首都ジャカルタにて150人のスマホホームスクリーンのスクショをひたすらに撮影してくるというContextual Dataの調査をしてきました。その収集データの一部を公開します!

なぜスマホスクリーンなのか

2年ほど前にメルカリさんが採用選考における取り組みの1つとして”スクショ採用”なるものを導入されたことが少々話題になりました。

プロダクトマネージャーの『ホーム画面スクショ採用』はじめました
履歴書代わりにスクショ提出 メルカリがスクショ採用を始めたワケ

この取り組みの背景として、
「ありきたりな文章で書かれる履歴書よりも、スマホのホームスクリーンのほうが、応募者の人となりを理解することができる」
という仮説があったのではないかと思っております。

・どんなアプリをインストールしているか
・アプリをどのようにフォルダ分けしているか
・アプリ通知の数はどうなっているか
・背景画像には何を入れているか

など人それぞれによって多くの違いがあることがスマホのホームスクリーンから知ることができます。

また、QueueのBusiness Designにて定義するContextual Dataにピッタリのテーマであったことも大きな理由です。

1. 単体データのみでinsightを抽出するほどの価値を持つ定性データ
2. デジタルデータとして保存可能 or 定量的な収集が容易なもの
3. 他のどのプレイヤーも収集していないデータ


これらを定性と定量の間に位置するデータ、Contextual Dataと呼ぶ。

スマホのホームスクリーンのようなContextualなデータを定量的に収集することによって、Fact化されたinsightを抽出し、普段のBusiness Design業務に活かしていきます。


なぜインドネシアなのか

・スマホの所持率が高い国であること
・日本の他のプレイヤーの誰も持っていないデータであること
・国内もそうですが、中国, シンガポール, アメリカ, 日本などの多くの国も進出しており、ホームスクリーンとしての独自性が高く見込めたこと

というのが大きな理由です。現地の土地勘があり収集しやすかったことも理由に挙げられます。

調査内容

大学生とGO-JEKのドライバーにターゲットを絞り調査を実施しました。

GO-JEKとは?
ジャカルタに本社を置く配車アプリです。
配車だけでなく、レストラン予約や決済などにも進出し”Super App”と呼ばれる総合型サービスとなっています。

①インドネシア大学
対象:大学生100人(18〜22歳)
時間:11:00〜15:00

②Go jek ドライバー
対象:Gojekジャケット着用のドライバー50人(平均年齢33歳)
時間:11:00〜15:00

非常にアナログな方法ですが、
「スマホのホームスクリーンを撮影させていただけませんでしょうか?」
とひたすらに質問をさせていただきました。恥を捨てて臨みました。

撮影の手間を取らせないように、スクショ撮影専用のSmartボックス(ティッシュボックスを重ねたもの)を用意し撮影していきます。

専用ジャケットを着用されているGO-JEKドライバーの方は英語が通じないこともあり、片言なインドネシア語を駆使し集計に成功。
「面白いことやってるじゃん」という群れが自然と出来上がってきます。

収集したのは以下の2点です。
・アプリがインストールされているホームスクリーン
・(iosの場合は追加で)スクリーンタイム

2日間かけ、合計150人のスマホのホームスクリーンを収集することができました!!

なかなかの量です....!!

今回はスプレッドシートで各アプリのインストール数の集計をしました。(次回はもっとスマートに集計します。)

調査結果

まず、ios, androidの比率(%)です。

インドネシア大学の学生のios, android比率は日本と大差はありませんでした。GO-JEKのドライバーはインタビューさせていただいた50人全てandroid端末でした。

続いて、アプリの総ダウンロード数についてです。

日本国内で実施した集計と比較したところ、全体として30~59個のアプリをインストールしている層がボリュームゾーンとなっています。

次は、スクリーンタイムについてです。

上位3つのアプリが全使用時間における8割を占めるというのはよく言われますが、想定内の数値結果が出ました。
instagram, WhatsAppの利用時間割合が多いのが日本と異なる特徴です。

最後にジャンル別にアプリの集計をしました。

①SNS


インドネシア大学の学生では、Instagram, Twitter, LINE, WhatsAppの4つのアプリをインストールされてるユーザーが圧倒的に多いです。

一方、GO-JEKドライバーの利用率を見てみると、WhatsAppは多いもののLINEやInstagram, Twitterの利用率が軒並み下がっており、アプリ利用特性に違いがあることがわかります。

GO-JEKドライバーのLINE利用比率が著しく低いですが、ヒアリングを通していく中で、メッセージングアプリにも以下のような使い分けがあることがわかりました。

WhatsApp...家族用のメッセージングアプリ
LINE...若者向けの友達用のメッセージングアプリ

日本ではLINEの利用率が全体として8割ほどであることから、メッセージングアプリ1つとっても異なるマーケットであることが想像できます。

また、調査をしていく中で、GO-JEKドライバーしか利用しないアプリがあることがわかりました。

Facebook lite...軽量版Facebook
Telegram...秘匿性の高いメッセージングアプリ

日本での固定回線普及率は70%ほどですが、インドネシアは2%前後と言われています。また、GO-JEKドライバーの月収は4万円ほどと言われており、ケータイの通信料金は3GBあたり3,000円ほどとなっていることから、無駄な機能を省いた軽量版アプリの利用ニーズがあることがわかりました。

Facebook liteではタイムラインが手動読み込みになっていたり、動画の自動再生機能がオフになっているなど無駄な通信を省く設計がされています。

日本と比較し、TikTokのダウンロード数が少ないです。

インドネシアはイスラム教徒が9割を占める国であり、ポルノ雑誌やアダルトビデオの販売を禁止しています。2018年には「性的・暴力的コンテンツが配信されている」という理由でTikTokが政府によりブロックされ、過去にはvimeo, tumblr, netflixなどがブロックされたこともあり、LINEも同性愛を強調するスタンプの配信停止を求められるなど、政府からの多少の圧力があるようです。

エログロ等のネガティブコンテンツ対策や、対象年齢のカテゴリー分け、現地の雇用創出等が求められています。

こういった宗教・政治的な背景もアプリのダウンロード数に影響を与えている要素かもしれません。

②メディア(音楽、動画)


Spotify, Youtubeが音楽・動画メディアとしては最も多く利用されています。

GO-JEKドライバーに注目してみると、share it, mi drop, Youtube Goといった見慣れないアプリをダウンロードしているユーザーが多いことがわかります。

share it...音楽ファイル共有アプリ
mi drop...ファイル共有アプリ(写真・動画・音楽)
Youtube Go...Youtube公式動画ダウンロードアプリ

Spotifyの利用割合が少ないことからも、share it, mi dropのように無料でローカルに落とした音楽をシェアをすることができるアプリにニーズがあることがわかります。またYoutube Goをはじめ、Facebook liteと同様に軽量のアプリがここでも多く利用されていることがわかりました。

VOD, ライブ動画配信サービスも利用されていることがわかりました。

HOOQ...東南アジア系のローカルコンテンツに力を入れたVODアプリ
V live...著名人によるライブ動画配信アプリ
viu...韓国ドラマに力を入れたVODアプリ

検閲関連の法律が厳しいインドネシアにおいて、Netflixは法の遵守を拒否しているため、インドネシア国営通信会社Telkom が運営するプラットフォームから Netflix は排除されている関係で多様な動画配信サービスが並んでいます。

③モビリティ


日本のデータと比較し、一番大きく異なる点として挙げられるのがライドシェアサービスの利用率の違いです。インドネシアではターゲットユーザー問わず、多くのユーザーがGrab, GO-JEKをマストアプリとして利用していることがわかります。

また、ホームスクリーンを収集したのは専用ジャケットを着用されているGO-JEKドライバーでしたが、競合であるGrabアプリを併用して使用しているユーザーが4割ほどいることもわかりました。

日本の若者の間で流行っているZenlyに関してもインドネシア大学の学生の5%が利用していました。

2019年になって地下鉄が開業するなど、交通渋滞がひどいジャカルタならではとして、カーナビアプリのWazeの利用割合が多かったことも特徴として挙げられるかと思います。

Zenly...位置情報SNSサービス
Waze...Googleが買収したカーナビアプリ

④EC


15,000ほどの島で囲われていることや、首都圏の交通渋滞及びインフラの未整備といったことから、配送サービスが充実していない印象を持っていましたが、消費者をみると各種ECアプリをダウンロードしているユーザーが多いことがわかりました。

Bukalapak...Naverも出資しているインドネシア発のECユニコーン企業
Shopee...東南アジアで展開しているシンガポール発のEC企業
Tokopedia...Softbank, Alibabaが支援するC2Cマーケットプレイス
Lazada...Alibabaグループに所属する、東南アジア最大級のEC企業

Amazonも今後進出することが予想され、ますます競争が激化する領域となりそうです。

⑤その他


イスラム教徒向けのMuslim Proという礼拝所の場所案内サービスは3割近くがダウンロードしていたり、GO-JEKドライバーは日本ではガラケー時代に流行した壁紙や着信音を手に入れるアプリを3割近くの人がダウンロードしているなど、ここで全て紹介することはできませんが、インドネシアならではのアプリが数多く存在しています。

日本で見たことがあるようなサービスの東南アジア・インドネシア版アプリも多く存在していることがわかります。(ex:zomato → インド版食べログ)

tiket.com...チケット予約アプリ
Traveloka...オンライン旅行代理店アプリ(ticket.comの競合)
cinema 21...映画館アプリ
TIX ID...映画館アプリ
Zomato...インド発のレストラン検索アプリ
MuslimPro...イスラム教徒向けアプリ(礼拝所の場所案内など)
WEB TOON...LINE漫画のローカライズアプリ
Zedge...壁紙・着信音入手アプリ
lucky patcher...違法ダウンロードアプリ

その他アプリの利用率や、ユーザーの定性情報などはここでは全て書ききることができませんが、インドネシアだからこそのユニークなデータが数多く集まりました。

最後に

今回は収集データの一部を公開させていただきました。

GO-JEKドライバーと、インドネシアの学生との違いが顕著に出ていることから、インドネシア国内でもコミュニティによって全く違うアプリ利用特性があることがわかります。

日本でのデータと見比べても国によって似て非なるアプリの利用状況であることや、現地の経済環境, インフラ, 政治, 宗教等を加味した独自のアプリも存在することがわかりました。

QueueのBusiness Designではこれらの集計結果の考察を引き続き行っていきます。また、集計場所を変えて再度調査を実施し、引き続きスマホスクリーン代表されるContextual Dataを収集し通常のワークへ活用していきます。

またブログでも紹介させていただきますので、是非楽しみにしていてください!😁

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Queue Inc.

Queueは、渋谷を拠点とするスタートアップです。コンピュータサイエンスをバックグラウンドとするメンバーを中心に、研究開発からアプリケーション化までを高速に行うことで、今までこの世界に存在しなかったソリューションを提供します。
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